☆GALLERY☆

文:山口拓実

アラン alain

…このコラージュは、プロのカメラマンをめざしてがんばってた友達がモデルです。ぼくも何度か朝焼けの撮影につき合ってカッコいい姿を目撃しました。けれど、彼はその後、夢をあきらめて、カフェのギャルソンになってしまいました。理由はわかりません。とてもがっかりして、そんな時に、これをつくりました。彼の夢中だった顔を知ってる者として、友達として、変わっても変わらぬものがあることを、ぼくは自分のつくったものから教わりました。
*1997年 ポストカード展入選作品
*1997年 初個展「友達図鑑 les liaisons」DM使用及び展示作品/個人蔵

 

アレクサンドル alexandre

…彼のおとうさんは世界的に有名な画家で、彼もアーティストとして活躍していて、そんな二人からぼくはいろんなことを学びました。ナショナリティを含む個性とか、とくにシゴトでの人間関係の注意点とか、フランスでの過ごし方とか。
*1997年 初個展「友達図鑑 les liaisons」展示作品/個人蔵
*2004年 ブティック bien DM使用

 

ベン ben

…「友達図鑑」という個展で展示された作品の半分は、絵の具やクレヨンの代わりに、友達がくれた切符や切手、いっしょに歩いた道の落ち葉などで、その友達を描いてみました。みんなそっくりです。
*1997年 初個展「友達図鑑 les liaisons」展示作品

 

イングマル ingemar

…ラッセ・ヘルストレム監督のスウェーデン時代に「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」という名作がありました。次々に起こる悲しみと愛すべき人たちの中で、主人公のイングマル少年はちゃんと大人になっていく。この大好きな映画の世界をひろげて「競争だったら月としよう!」というコラージュをつくってみました。その中に、このイングマルがいます。
*1998年 個展「シトロン mon citron」展示作品(個人蔵)より部分使用
*2005年 輸入代理店 lMS DM使用

 

みんなの歩道 notre promenade

…カルチェラタンにあるちいさな公園。お昼のサンドイッチをほおばる学生がいたり、すべり台で遊ぶこどもを気にしながら読書するおとうさんがいたり、おしゃべりに夢中なマダムたちや手足をからませる恋人たちもいます。みんなパリのやわらかな陽だまりがスキで、みんなこの短い歩道を通ってやってきます。
*2003年 個展「冒険は続いてる! l'aventure continue!」展示作品
*2006年 個展「ma dieu !? 神様は女のコかもしれない」展示作品/ 個人蔵

 

 

 

犬と狼の見分けがつかない時刻 

entre chien et loup

…夕暮れは日本でも黄昏や逢魔が時など詩的な表現をしますがフランスにもこんな言い方がありました。そしてパリ・モンマルトル地区のアパートの窓から、そんな空を見つけました。何か起こりそうです。
*2003年 個展「冒険は続いてる! l'aventure continue!」展示作品

 

 


フレール frère

…ともだちも月日を重ねると家族みたいです。ぼくには、フランスにたぶん年下だけどおとうさんがいて、日本には血のつながらない家族が全員そろってます。
*2005年 アンティーク家具そらや DM使用
*2006年 個展「ma dieu !? 神様は女のコかもしれない」展示作品/個人蔵

 

アヴィニョンのアイス glace d'avignon

…誕生日にもらったプラスチックレンズのカメラが大好きな黄色だったから、以来どこへでも持ち歩き、シゴトで行ったアヴィニョンでも撮ってみました。南仏のあかるい陽光の中、出会うものみんな踊っていて、ぼくの心も踊ってきました。
*2007年 展覧会「原っぱで会いましょう!」告知ポスター使用作品

 

 

コパン copain

…天才・南方熊楠さんの本をずっと読んでいて、この春に本からふくらませた風景を確かめたくて彼の生まれた和歌山市や後半生を過ごした田辺市などをたずねてみました。偶然の多いひとり旅でしたが、声をかけてくれたひとが、熊楠さんの親戚の方や、熊楠さんが田辺に住むきっかけとなった中学時代の親友のご家族の方で、いろんなお話を伺いました。熊楠さんのかわいがってたカメの子孫が生きていること。死期が近づいたときのこと。また会う約束を交わしたこと。そしてお話が続いて滞在を延ばした最後に熊楠さんのお墓をたずねお参りを終えると、1週間お天気続きだったのに雨が降ってきて傘をくれたひとがいたこと。そんな世の中を伝えたくて、こんなコラージュをつくってみました。
*2007年 展覧会「原っぱで会いましょう!」展示作品より部分使用

タカラモノ…フジサン・エッフェル塔・縄文杉・カルタゴ・京都タワー
les tresors…fuji-san・tour-eiffel・joumon-sugi・carthage・tour-kyoto

…おみやげ屋さんで売ってるような、楽しかった思い出の証拠をつくってみました。これからも増えていきそうなタカラモノです。
*2007年 展覧会「原っぱで会いましょう!」展示作品/フジサン・縄文杉 個人蔵

カエル橋 pont de grenouille

…和歌山県のJR印南駅近く、明るい田園風景の中に、実際に「かえる橋」はあるんです。「かえる」の持ついろんな意味合いをテーマに、町の活性化事業の一環として建てられたそうです。電車の窓から見た時のビックリとおもしろさに、ぼくも印南町の掲げたテーマを自分に置き換えて、せっかく出会ったのにもう会えなくなった人たちへ向けて、こんなコラージュをつくりました。
*2007年 展覧会「原っぱで会いましょう!」展示作品
*2008年 展覧会「きょうもたのしくなりそうだ!」展示作品

如雨露 un arrosoir

…パリにいる時にベンジャミンの植木をもらって、そうだ、ジョウロを買わなくちゃって思いました。そこで和佛辞典で調べました。フランスで改めていいなと思ったのは、お店の人にあいさつから始まって欲しいものを告げて買い物するセイカツです。そうして見つけた単語は「r」が入っていて発音むずかしそうだと思いつつ、日本語に、その漢字に注目。詩的で、心がにぎやかになってきて。恥ずかしい話ですが、ぼくは留学してやっと日本に興味を持つようになり、この時の「如雨露」との出会いがきっかけのひとつになりました。
*2008年 展覧会「きょうもたのしくなりそうだ!」展示作品

text:takumi yamaguchi / deta:IMS Inc.

 

©takumi yamaguchi / IMS Inc.